信頼していた上司からのホテル誘い体験談 | 職場での境界線と信頼関係の再構築

今回のインタビューでは、企業の人事部で働く水野紗帆さん（34歳）に、職場での信頼関係と境界線について語っていただきました。男性中心の職場で唯一の女性として奮闘する水野さんが経験した、ある夜の出来事と、その後の心の変化についてのリアルな話をお届けします。インタビュアーは当メディアの管理者・女性用風俗セラピスト洋平がつとめます。

プロフィール

水野 紗帆（みずの さほ）
34歳。神奈川県横浜市在住。大手企業の人事部で採用担当として勤務。前職は営業職で、3年前に人事へキャリアチェンジ。現在は婚約者の川崎拓也さん（36歳・同業界の別企業勤務）と同棲中。趣味はカフェ巡り、ジョギング、インテリア雑誌収集。

一年間の信頼関係

洋平: まずは、水野さんの職場環境について教えていただけますか？

水野: 私が働いている部署は、私以外はほぼ男性なんです。しかも大半が既婚者の先輩たち。最初は正直、肩身の狭い思いをしていました。でも、徐々に馴染んできて、特に直属の上司である田中部長（45歳）には本当にお世話になってきたんです。

洋平: 田中部長とはどんな関係だったんですか？

水野: 入社したての頃から、いつも温かくフォローしてくださる方でした。「水野さんの『人の良さを見抜く力』は、うちの採用チームには絶対必要なんだ」って言ってくれたことが、すごく嬉しかったんです。私、緊張すると空回りしちゃうタイプなので…。この一年間、何度も心の中で「この人なら信頼できる、この人がいるから頑張れる」って思ってきました。

洋平: 具体的にどんな場面でサポートしてもらったのですか？

水野: 特に前月の採用面接週間がすごく大変で…。体調を崩して、泣きながら資料作りをしていた私を、黙って手伝ってくれたんです。彼のおかげで何とか乗り切れた。そんな感謝の気持ちでいっぱいでした。彼氏の拓也にも、よく「田中部長って、本当に頼りになるんだよね」って話していたくらいです。

あの夜の出来事

洋平: そんな信頼関係に何か変化があったんですか？

水野: はい…。先日、部署の飲み会があったんです。居酒屋の個室で上半期の成果を祝う会で、私も含めて皆楽しく過ごしていました。「水野さんのおかげで、今期の新人たちの質が違うよ」なんて言葉をもらって、純粋に嬉しかったんです。でも…その日の田中部長の視線が、時々妙に長く私に留まることに気づいたんです。

洋平: その時点で違和感はあったんですね。

水野: そうですね。料理を取り分ける時に、普段より近い距離で「水野さんには特別だよ」と耳元でささやかれた時、小さな違和感を感じました。でも、感謝の気持ちでいっぱいだった私は、それを単なる上司の気遣いだと解釈してしまったんです。

洋平: それから何があったんですか？

水野: お店を出る頃には夜の9時半で、まだ終電まで時間はあったんです。解散するとき、田中部長が「同じ方向だよね。良かったら駅まで一緒に行かない？」と声をかけてきて…特に疑うこともなく、「はい、ありがとうございます」と答えました。他のメンバーと別れ、二人で駅へ向かったんです。小雨が降り始めていて、少し肌寒い夜でした。

境界線が崩れた瞬間

洋平: 駅までの道中で何かあったんですか？

水野: 駅前の雑踏を歩きながら、田中部長が突然「まだ終電まで30分以上あるね。ちょっと立ち飲みでもどう？」と言ったんです。私は「一杯だけでしたら」と答えました。何の疑いもなく。むしろ、このチャンスに直接アドバイスをもらえるかもと思ったくらいです。

洋平: 立ち飲み屋での様子はいかがでしたか？

水野: 最初は和やかな雰囲気でした。お互いの健闘を讃え合い、来年度のプロジェクトの話も少し。ところが、田中部長が急に真面目な顔になって「実は水野さんのこと、ずっと気になってたんだ」と言ったんです。その言葉に、私は一瞬固まりました。頭の中が真っ白になる感覚でした。でも、まさかそういう意味ではないだろうと思い、「仕事のことでご心配おかけしてすみません」と返しました。

洋平: その後、どうなりましたか？

水野: ビールを一気に飲み干して、「そろそろ行きましょうか」と言って、お店を出たんです。ほっとした束の間…駅に向かって歩き始めた瞬間、突然、田中部長が私の手を掴んだんです。冷たい雨の中、彼の手の温かさと強さを感じて、私は足が止まりました。心臓が早鐘を打ち始め、指先が冷たくなるのを感じました。そして、彼は「今日は、ホテルに行かない？本当に何もしないから」と言ったんです。

洋平: かなりショックだったでしょうね…

水野: はい…その言葉が現実として耳に入ってくるまで、数秒かかりました。信じられない気持ちと、急に襲ってきた恐怖感。私が答える前に、田中部長は私のカバンを掴み、近くのホテルの方向へ歩き始めたんです。私は「ちょっと待ってください。それはできません」と言いましたが、声が震えていました。

信頼の崩壊と逃げ帰った夜

洋平: その時、田中部長はどんな反応でしたか？

水野: 「本当に何もしないよ。ただ話したいだけ。俺はそんなに信用ないかな？」と言われたんです。その言葉に、私の中で何かが崩れていくのを感じました。信頼していたからこそ、その言葉が刃物のように胸を刺しました。何度「本当に何もないなら、居酒屋で話しましょう。私には大切な彼がいるし」と言っても、彼は聞く耳を持たなくて…「何もしないから」の一点張りだったんです。その言葉と行動の不一致が、私の恐怖を増幅させました。

洋平: どうやって、その状況から抜け出したんですか？

水野: 雨が強くなって、私の頬を伝う雨粒が、涙なのか雨なのか分からなくなりました。体は震え始め、胃がキリキリと痛み始めたんです。この状況から逃げ出したい。そう思った瞬間、勇気が湧いてきて「もう離してください！」って力を振り絞って手を振りほどき、走り出しました。背後から田中部長の声が聞こえましたが、振り返らずに駅に飛び込み、ちょうど来た電車に乗り込んだんです。扉が閉まる瞬間、ホームに立つ田中部長の姿が見え、車内の一番奥の席に身を隠しました。

洋平: 電車の中ではどんな気持ちでしたか？

水野: 震える手で拓也に電話をかけました。声を出した途端、堰を切ったように涙が溢れて…。抑えきれない嗚咽の中、断片的に状況を説明しました。電車の揺れと共に、これまでの田中部長への信頼、感謝の気持ち、そして裏切られた感覚がぐるぐると回っていました。自分を責める気持ちも湧いてきて…もっとはっきり断るべきだったのか、そもそも二人きりになるべきじゃなかったのか。頭の中で思考がループしていました。

パートナーの支え

洋平: 彼氏の拓也さんの反応はどうでしたか？

水野: 拓也は電話越しに、ずっと私の話を聞いてくれました。「紗帆、あなたは何も悪くないよ。よく逃げられたね。本当に怖かったね」って。彼の言葉に、少しずつ落ち着きを取り戻しました。家に着くまで電話を切らずにいてくれた拓也の存在が、唯一の安心でした。

洋平: 家に帰ってからは？

水野: 熱いシャワーを浴びても、気持ちの寒さは消えなくて…。拓也が抱きしめてくれて、ようやく体の震えが収まりました。彼も「田中さんって、皆から信頼されてる人じゃなかったっけ？」と驚いていました。拓也自身、業界内で田中部長の評判を聞いていたからです。真面目で誠実、部下思いという評判だったのに。

洋平: 夫婦間や恋人間のスキンシップって、そういう意味では大切ですよね。特に不安を感じている時には。

水野: そうですね。あの日、拓也が単に言葉ではなく、物理的に抱きしめてくれたことが本当に救いでした。言葉だけじゃなく、触れ合うことで伝わる安心感って大きいんです。私たちは普段から、忙しくてもハグや手をつなぐといった小さなスキンシップを大切にしています。あの夜のように心が傷ついているときは特に、そういう温もりが必要だなって実感しました。

洋平: なるほど。パートナーとの親密な関係があったからこそ、支えになったんですね。ところで、最近「スキンシップ不足」が社会問題になっているという話を聞きますが、そういった話題について、水野さんはどう思われますか？

水野: そうですね…確かに現代社会では、デジタル化が進んで直接的な触れ合いが減っていると感じます。私自身、仕事が忙しい時期は拓也とのスキンシップの時間も減ってしまうことがあって。でも、そういう触れ合いや温もりって、人間の基本的な欲求だと思うんです。誰しも、安心できる相手との肌の触れ合いを求めているんじゃないでしょうか。

親密さの境界線について

洋平: 最近、「女性用風俗」、いわゆる「女風」と呼ばれるサービスが話題になっています。男性セラピストに2時間2万円程度を支払って、恋愛感情や寂しさ、時にはスキンシップの欲求を満たすサービスですが、水野さんはこういったサービスについてどう思われますか？また、もし機会があれば利用してみたいと思いますか？

水野: うーん、難しい質問ですね…。正直に言うと、パートナーがいる今の状況では利用することはないと思います。でも、独身時代に知っていたら、興味を持ったかもしれません。仕事が忙しくて出会いがなかった時期もありましたから。ただ、そういうサービスを利用する女性の気持ちは理解できます。誰にも頼れない時、話を聞いてもらいたい時、温かみを感じたい時…そういうニーズがあるのは自然なことだと思います。

洋平: もし独身で、そういったサービスを利用するとしたら、どういった点を重視しますか？

水野: 安全性が一番ですね。そして、本当に話を聞いてくれるかどうか。今回の経験からも、「信頼できる」と思っていた人が実は違ったという怖さを身に染みて感じました。だから、明確な境界線があり、それを絶対に越えないという保証があることが大切だと思います。あと、やはり相性も重要かな。ただ単に時間を過ごすのではなく、本当に心が軽くなる、癒されるような関係性が築けるかどうか…。でも、結局のところ、業者と利用者という関係性には限界があるとも思います。

洋平: 安全性と境界線の明確さですね。今回の経験から、職場での境界線についても考え方が変わったのではないかと思いますが、その後はどのように対応されたのですか？

次の朝と新たな境界線

水野: 翌朝は本当に会社に行きたくなかったです。鏡に映る自分の顔は、疲れて血色が悪く、目の下にはクマができていました。拓也が「無理しないでいいんだよ」と言ってくれたんですけど、私は決めていたんです。逃げても何も解決しない。行って、自分なりの境界線を引こうと。

洋平: 勇気のある決断ですね。会社ではどんな対応をされたんですか？

水野: 会社に着くと、いつもより早めだったこともあり、オフィスはまだ静かでした。自分に「私は何も悪くない。でも、これからは自分の境界線をもっとはっきりさせなきゃ」と言い聞かせていました。田中部長が出社してきたとき、視線が合った瞬間、彼の顔に一瞬の動揺が走りましたが、すぐに普段の表情に戻りました。私は「おはようございます」と返しながら、基本的な礼儀は守るけれど、必要以上に親しくならない、仕事上の関係に徹するという新しい境界線を引くことに決めていました。

洋平: 田中部長からは何かアプローチはありましたか？

水野: 昼休み、一人でカフェテリアに行こうとした時、後ろから呼び止められたんです。「水野さん、昨日のことなんだけど…」と。心臓が高鳴るのを感じながらも、冷静に「昨日のことは忘れましょう。でも、これからは仕事以外でお酒を共にすることはできません」と伝えました。田中部長は一瞬言葉に詰まり、それから「そうだね。昨日は酔っていて、本当に申し訳なかった」と謝罪しましたが、どこか他人事のような印象も受けました。もう以前のような信頼関係には戻れないことを、お互いに感じていたと思います。

経験から学んだこと

洋平: この経験から学んだことはありますか？

水野: たくさんあります。まず、自分を大切にすることの重要性。そして、境界線を明確に引くこと。大学時代からの友人・麻衣にも状況を話したんですが、彼女が「明確に境界線を引くことは自分を守ることだから」と言ってくれたのが、すごく心に響きました。同じような経験をした女性は少なくないのだろうと思うと、何だか自分だけじゃないという安心感も湧いてきました。

洋平: 具体的に生活を変えたことはありますか？

水野: 小さいことですが、帰り際に田中部長とエレベーターで二人きりになるのを避け、階段で下りるようにしています。小さな行動ですが、自分を守るための新しい習慣です。それから、友人や彼氏など、本当に信頼できる人との関係をより大切にするようになりました。何よりも、自分の直感や違和感を無視しないことを学びました。あの時、小さな違和感を感じていたんです。でも、「気のせいだろう」と思って無視してしまった。これからは、そういう自分の感覚をもっと大事にしようと思います。

洋平: 最後に、同じような状況に直面している女性へのメッセージがあれば教えてください。

水野: まず、あなたは一人じゃないということ。そして、自分を責めないでほしい。相手を信頼していたからこそ裏切られた痛みは大きいけれど、それは信頼した方が悪いわけじゃない。裏切った方が100%悪いんです。そして、自分の境界線を明確にすることを恐れないでほしい。「嫌だ」「それはできない」と言うことは、自分を守るための大切な行動です。これは職場だけじゃなく、あらゆる人間関係に言えること。最後に、信頼できる人に話を聞いてもらうことで、心は少しずつ癒されていきます。一人で抱え込まないでほしいです。

洋平: 貴重なお話をありがとうございました。

水野: こちらこそ、話を聞いていただき、ありがとうございました。この経験を話すことで、少し心が軽くなった気がします。

この記事が、職場での境界線の問題に悩む方々の助けになれば幸いです。誰もが安心して働ける環境づくりのために、私たち一人ひとりができることを考えていきましょう。