「女性用風俗(いわゆる女風)の市場は、今後伸びるのか、それともすでに飽和しているのか?」——
この問いにまずは市場規模を定量的に推定し、その上で成長の可能性や限界を評価する。
市場規模の推定に使う基本構造は以下の通り。
- ターゲット人口:サービスを利用し得る日本の女性人口
- 利用率(浸透率):その中で実際に利用する割合
- 利用頻度:利用者1人あたりの年間利用回数
- 平均単価:1回あたりの支出額
式にするとこうなる。
市場規模 = ターゲット人口 × 利用率 × 利用頻度 × 平均単価
さらに成長性の判断には、以下の要素も加味する必要がある。
- 社会的・文化的変化(性意識、価値観の変化など)
- 経済的背景(可処分所得、女性の経済的自立)
- 競合サービスの動向(ホスト、マッチングアプリなど)
- 法規制リスク(風営法などの適用範囲)
目次
各要素に対する仮定と前提の根拠
1. ターゲット人口
- 仮定:日本の女性人口約6400万人のうち、経済的に自立し、かつ性的関心を持ちうる20~49歳を対象とし、その数を約2500万人と見積もる。
- 根拠:
- 20代〜40代は収入も安定し、自己決定で消費行動を取れる層。
- 高齢層は身体的・文化的ハードルが上がる傾向。
- 若年層は経済的制約が大きく、利用には不向き。
2. 利用率(浸透率)
- 仮定:利用率は0.05%(=0.0005)と設定。
- 根拠:
- 強い社会的偏見が存在。
- 男性向け風俗に比べ、認知も流通量も圧倒的に少ない。
- とはいえネットの匿名性や情報開示の進展が後押し。
- 推定レンジとしては0.03%〜0.1%が現実的。中間値を採用。
3. 利用頻度
- 仮定:年に2.5回とする。
- 根拠:
- 利用動機は「日常消費」ではなく「ご褒美」や「癒し」などの非日常目的。
- プライバシーへの配慮や費用のハードルから高頻度利用は少数。
- リピーターもいるが、全体平均はこの程度が妥当。
4. 平均単価
- 仮定:1回あたり25,000円。
- 根拠:
- 男性向けと比較して高単価設定(提供者の質や希少性、環境の整備などによる)。
- 実際の相場は15,000〜40,000円。中央値を採用。
計算プロセス
1. アクティブな顧客数
25,000,000人 × 0.0005 = 12,500人
2. 年間の総利用回数
12,500人 × 2.5回 = 31,250回
3. 年間市場規模
31,250回 × 25,000円 = 781,250,000円
⇒ 約7.8億円
上限・下限の推定レンジ
▼ 下限ケース
- ターゲット人口:2,000万人
- 利用率:0.03%(=6,000人)
- 利用頻度:2回/年
- 平均単価:20,000円
- 市場規模 ≒ 6,000人 × 2 × 20,000円 = 2.4億円
▼ 上限ケース
- ターゲット人口:3,000万人
- 利用率:0.1%(=30,000人)
- 利用頻度:3回/年
- 平均単価:30,000円
- 市場規模 ≒ 30,000人 × 3 × 30,000円 = 27億円
つまり、現在の市場規模は2.4億〜27億円の範囲にあり、中央値として7.8億円前後という見方が現実的。
成長可能性 vs. 飽和リスクの構造分析
▽ 成長を後押しする要素
- 女性の経済的自立とご褒美消費の増加
└ 収入上昇と自己決定志向の強まり - 性意識の多様化と肯定的変化
└ 欲求の肯定化と性の自由への理解浸透 - 匿名性の高い情報取得の容易化
└ SNSやレビュー、ネット予約の普及 - サービスの高品質化・多様化
└ 癒し・共感・体験重視の進化
▽ 成長を抑制・停滞させる要素
- 根強い社会的偏見
└ 「バレたらどうしよう」の心理障壁 - 競合サービスの存在
└ ホスト・マッチング・エロコンテンツなど - 法的・規制リスク
└ グレーゾーン事業ゆえの制限と不確実性 - 供給側の限界
└ 質の高いセラピストの継続確保が困難、拡張性に限界
5年後までの成長シナリオ
● 中位シナリオ(年率4%成長)
7.8億円 × (1.04)^5 ≒ 9.5億円
● 上位シナリオ(年率7%成長)
27億円 × (1.07)^5 ≒ 37.9億円
● 下位シナリオ(年率2%成長)
2.4億円 × (1.02)^5 ≒ 2.7億円
総合的な結論
女性用風俗市場は、現在最大でも30億円未満の比較的小さなニッチ市場だが、以下のような特徴を持つ:
- 緩やかな右肩上がりの成長
社会的・法的制約により、急激なブーストは見込みにくい。 - 利用率の限界によるニッチ性の持続
ターゲットの裾野が狭いため、全体の浸透率は0.1%未満にとどまりやすい。 - 高付加価値化の方向にシフト
体験価値・癒し・カウンセリング的要素との融合がカギ。 - 将来的な飽和の可能性
長期的には成長の限界に到達し、市場は安定or停滞局面へ。 - オンラインとの融合による進化
対面サービス+オンライン接点(予約・カウンセリング・コンテンツ)のハイブリッド化が進む可能性大。
■ 事業戦略的示唆
この市場に新規参入する、または既存プレイヤーとしてスケールを狙うのであれば、単なる「店舗数の拡大」や「価格勝負」ではなく、
- 特定セグメント(年齢層・嗜好・体験目的)に刺さるサービス設計
- オンライン導線やデジタル資産との連携
- 高価格帯にふさわしいブランディング・顧客体験
が必須。
要するに、「数を追うより、深さと差別化で勝てる構造を作れるかどうか」が命綱ってわけ。